ONTARIO OUTDOOR ADVENTURES

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SPRING 2006
Backyard
ブルース半島の魅力
私達の仕事は,、まだ知られていないオンタリオ州の素晴らしい自然を発見しツアーを通してこうした自然を皆様がありのまま体験し、何か学び取る事が出来る様分かり易く解説して行く事だと考えています。 こうしたポリシーに基づき、去年6月私達は野生のランが咲く事で有名なブルース半島へ赴き、今年の新しいツアーとして「ブルース半島の野生ランツアー」を作りました。 この地域はナイアガラエスカープメントと呼ばれ、ナイアガラの滝付近から続く侵食崖の北端となっています。ヒューロン湖とジョージア湾の間に突き出た半島の地形及び地理的特長のため、この地域には約40種以上もの野生ランが自生し、「野生ランの宝庫」としてラン愛好家達の間で知られています。 この半島を代表する場所は何と言ってもファゾムファイブ海洋国立公園内にある、スラワーポットアイランドと言えるでしょう。船で島に渡り島内をハイキングした際にも、こうした特別な環境にしか自生しない多くの野生ランを観察する事が出来ました。中でもカリプソ(calypso bulbosa)、別名フェアリースリッパー(天使のスリッパー)に出会う事が出来たのは幸運でした。このランは小さく目立たないサイズの為普段は見つけにくいとされているのです。勿論、こうしたランを数多く観察するにはピークシーズンを狙わなければなりません。この海洋国立公園の他、ブルース半島国立公園も見逃せないスポットです。ここでは、イエローレディースリッパー(cypripedium calceolus var. pubescens)が道端に所々群生し、その美しさは息を呑む程です。彼らの華々しい存在が森の中を明るく照らしているようでした。私達がこのエリアをハイキングして廻った3日間で、15種以上の野生ランを観察する事が出来ました。
最近気づいたのですが、こちらの郵便局「カナダポスト」が2006年に発行した切手の中にこのカリプソ($0.89 の 米国郵便向け)とイエローレディースリッパー($1.49 の国際郵便向け)が含まれています。 是非、皆様もこの新しいツアー「ブルース半島野生ランツアー」に参加し、こうした美しい野生ランとブルース半島の素晴らしい自然をお楽しみください。

ホリー ブレフゲン
親の影響で幼い時から自然に親しむ。85年、スキーテレマーク社設立。オンタリオ・アウトドアー・アドベンチャーズ代表取締役。 1児の母でもある。


野生ランの宝庫ブルース半島
トロントの北西約300キロに位置し、ヒューロン湖とジョージア湾の間に細長く突き出したブルース半島はその地形的な特徴から多様な生態系を作り出しています。その為多くの貴重な動植物が残され特に多くの野生ランが観察出来る事で知られています。この地形的特長とは、「ナイアガラエスカープメント」と呼ぶ、ナイアガラの滝近くから始まり半島の先端まで続く侵食崖にあります。この侵食崖は、約4億年前の古生代・シルル紀に海底だった部分が隆起し、約2億年かけて侵食された物です。事実この辺りの浜辺を歩くと、サンゴやウミユリ、貝などの化石がいたる所で見つかります。半島の東側は切り立った侵食崖が続き険しく複雑な海岸線で、西側はなだらかな平地という対照的な地形を形成しています。西側のヒューロン湖側からは西風が通年吹きますが、春先には冷たい西風が返って植物の芽吹きを遅くし冷害を防ぎ、秋にはまだ暖かい西風のお陰で霜が遅いので植物には好条件となるのです。また、Cold Bottomという夏は冷たい地下水が土壌に染み出し、冬は暖かくなる現象も西側で見られるのも大きな特徴です。断崖絶壁の続く東側は西側のシェルターの役目をしているばかりでなく、険しい地形の為開発が難しく多くが森林として残っている為、野鳥など他の動物達の生息地に最適です。また、前述した通りサンゴなどの堆積岩で石灰質の土壌である事も、多くの野生ランに適している理由です。この「ナイアガラエスカープメント」は1990年、ガラパゴス諸島やセレンゲッティーと同様、ユネスコバイオスフィアーリザーブ(世界生物圏保存地域・Biosphere Reserve)に指定されています。

ブルーストレイルの終着地点、トバモリー

ブルーストレイルの終着地点、トバモリー 2002年春号でも少し紹介した約800キロの「ブルーストレイル」は、ナイアガラの滝近くがスタート地点で終点はブルース半島突端の小さな港町、「トバモリー」です。ナイアガラエスカープメントに沿ったこのトレイルは、断崖から望む素晴らしい景色と多様な生態系を成す事から毎年多くのハイカー達を引き付けています。トレイルのモデルとなったのは米国、西海岸のジョンミューアトレイルですが、シェラクラブの創設者で、自然保護の父とされている米国人ジョンミューアが若い頃このブルース半島で2年間過ごし、このトバモリーにも足を運んでいるのはとても興味深い事です。この周辺の多くが「ブルース半島国立公園」となり自然環境の保護と同時に多くのハイカーやキャンパーの人気の場所となっているのは言うまでもありません。またトバモリー周辺の水域はリアス式の複雑な湖岸と大小の島々が多い為昔から難破船が多く、五大湖の中でも透明度が高いのでダイビングのスポットとしても世界的に有名です。こうした自然環境を守る事を目的にこの水域は1987年カナダで初のナショナルマリンパーク(海洋国立公園)である「ファゾムファイブ海洋国立公園」に指定されています。トバモリーの小さな湾内にも目視できる難破船が幾つかあり、遊覧船から見物出来るようになっています。トバモリーの港にはマニトゥリン島とキラニーを結ぶ100mの大きなカーフェリー「チーチマン号」が周航しており、シーズン中は周遊客でこの小さな港町も賑わいます。お洒落で小さなリゾートタウンの様な雰囲気と、澄み切ったエメラルドグリーンの湖面、白い絶壁や奇岩、洞窟の続く湖岸を見ていると自分がどこかの海に来ているような気持ちになるのも、トバモリーの魅力です。


ブルース半島を凝縮したフラワーポットアイランド

ブルース半島を凝縮したフラワーポットアイランド 海洋国立公園内に浮かぶ島フラワーポットアイランドは、トバモリーから5キロほどですが遊覧船を使うと難破船見物コースも含めると約1時間で到着します。周囲6.5kmの小さな島ですが、ここもナイアガラエスカ−プメントの一部ですので島内の東岸はドロマイト(苦灰岩)と呼ぶ白くてもろい石灰質の断崖や洞窟と複雑な湖岸が続き、エメラルドグリーンの湖面とのコントラストがとても綺麗です。この東岸には崖が侵食されて出来た大きな縦長の奇岩が2ケ水面から突き出し、「フラワーポット(花瓶)」と呼ばれています。島内には約3キロのハイキングコースが敷かれ、浜辺や森、太古の侵食で出来た洞窟など様々な環境を通るので、野生ランは勿論、多くの植物や野鳥達に出会える素晴らしいコースになっています。島内にはキャンプサイトもありますので、島に泊まってゆっくりと散策したい方には最高です。この島はまさにブルース半島が凝縮されている島と言えるでしょう。


侵食崖が続くブルース半島の湖岸線


ブルーストレイルゴール地点の記念碑


フラワーポット



ブルース半島周辺で見られる野生のラン
熱帯や温帯地方の植物と思われがちな蘭も77種がカナダに自生し、去年のニュースレターでもお話しした通り、私達がツアーをするオンタリオ州には約40種が自生しています。この40種のほとんどをトロントの北西に続く細長い半島、ブルース半島周辺で見る事が出来るのは驚きです。トロントから3〜4時間のドライブなので毎年ランの咲く季節になると、愛好家ばかりでなく一般の人達もお花見に出かけます。日本では絶滅危惧種に指定されたアツモリソウの仲間も6種自生し、中でも黄色い「イエローレデイースリッパー」は国道沿いでも鑑賞出来る程群生しています。今回はこうしたブルース半島を代表する幾つかのアツモリソウご紹介します。

ラージイエローレディースリッパーLarge YellowLady's Slipper/Cypripedium pabescence ラン科アツモリソウ属
スモールイエローレディースリッパーSmall YellowLady's Slipper/Cypripedium parviflorum ラン科アツモリソウ属
日本でもお馴染みのアツモリソウの仲間で、黄色の唇弁に細くねじれのついた側花弁が大きな特徴である。ブルース半島周辺で最もよく見るアツモリソウで、オンタリオ州全土に自生している。丈の大きさからラージとスモールに分類されているが、この地域では交配種が多いので見分けるのは難しい。ラージは丈が10cm〜50cmで茎・葉が細かい毛で覆われ、背ガク片、側花弁は黄緑〜薄茶。唇弁は3cm〜5cmでやや扁平、5月末〜7月頭に開花。スモールは丈10cm〜30cmで茎・葉の細毛が少ない。背ガク片、側花弁はラージより濃いこげ茶〜紫色でねじれも細かい。唇弁は2cm〜3cmでやや細長い。またバニラの様な芳香性があるのもスモールの特徴。ラージは日射にあまり左右されず様々な環境に適応している為カナダ全土に広がっている。通常は常緑樹の開けた場所か開けた岩場で見られる。特に石灰質の土壌を好むのでブルース半島周辺では育ちも良く点々とした群生を作る事が多く、一つの群れが50株になる事もあり見る者を圧倒させる。一方スモールの方はメープルなどの広葉樹林帯の比較的乾いたやや酸性の土壌を好むので自生地は東部の州に限られている。群生する事もまれである。ラージ・スモールの両種とも従来日本のカラフトアツモリソウ(別名キバナノアツモリソウcalceolus)の一種とされてきたが、現在は分けられている。

ラムズヘッドレディースリッパー Ram's Head Lady's Slipper/Cypripedium arietinum ラン科アツモリソウ属
こちらもアツモリソウの仲間だが、丈が10cm〜24cm、唇弁も1cm〜2cmとカナダでは最小のアツモリソウである。小さなサイズの為見つけるのに苦労するが、環境の変化に敏感な事とその特異な形状から盗掘が多くオンタリオ州では希少種に指定されている。英名の「ラムズヘッド」とは花の形状が羊の頭に似ている事に由来。唇弁は白地に赤いズジが上下左右に走り上部には細かな毛が生え、下部は細長く尖っていて他のアツモリソウとは大分異なっている。側花弁は下向きの細長。開花期は5月〜6月中旬までの約10日間。この短い開花期間も見つけるのに苦労する理由である。通常は単独で自生し、まとまっていても数本である。石灰岩上の薄い土壌で、松林など直射日光の当たらない比較的涼しい環境か、針葉樹に囲まれたフェン湿地などの湿った土壌にも自生する。自生地もオンタリオを始めカナダ東部の州に限られている。

カリプソCalypso/ Calypso bulbosa ラン科ホテイラン属 ヒメホテイラン
「カリプソ」とはギリシャ神話に出てくる海の妖精の名であり、アツモリソウが「レディースリッパー」と呼ばれるように、「Fairy Slipper・妖精のスリッパー」という別名もある。和名は唇弁の形を布袋様のお腹に例えた物。日本ではアツモリソウ同様、絶滅危惧種TBに指定されている。丈は10cm前後と小さく、1枚の葉からピンクの茎が伸び、槍状になった包葉からピンクの花を1個つける。ピンクの細長い背ガク片、側花弁が上向きに広がる。唇弁の内側は白いスジがつき先端はエプロン状に広がり、細毛が3列に並びこの部分は黄色い。そしてこの先端に距(きずめ)と呼ぶ2本の突起物がある。日本ではこのヒメホテイランとホテイランの2種あるが、北米ではこの種のみである。環境の変化に敏感な事と愛好家による盗掘などでオンタリオ州でも数は少なく、自生地はこのブルース半島が一番多い。カナダ全州で自生しているが西海岸ではまだ数も多い。

ラージイエローレディースリッパー

スモールイエローレディースリッパー

ラムズヘッドレディースリッパー

カリプソ
Editor: Katsu Sakuma
Special thanks : Dorothy & Alex MacNaughtan of Great Northern Images
Photo credit: Katsu Sakuma
References: "The Orchids of Bruce & Grey" by Owen Sound Field Naturalists "Guide to Fathom Five National Marine Park" by Jack Wellington
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