ONTARIO OUTDOOR ADVENTURES

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AUTUMN 2004
Backyard
生物が輝く季節・秋
秋は様々な生物が壮麗に輝く季節でもあり、普段気付かない生命の神秘とも言える不思議なライフサイクルが現れる時期でもあります。こうしたライフサイクルの中で、特に私はモナーク蝶に大変興味をそそられます。その美しい色ばかりでなく、彼らの自己防衛手段と渡りの能力には大変驚かされるからです。アルゴンキン公園には7月初旬にモナーク蝶の第1陣が到着し、この地で第1世代から第2世代まで繁殖します。幼虫の時期にはミルクウィードと呼ぶガガイモ科の葉を食べて成長しますが、アルゴンキンには湿原や原っぱ、路肩などミルクウィードが育つ最適な環境が整っているのです。この茎や葉にはミルクの様な白い液が多く含まれる為その名がついたのですが、この液体にはカルディアックグルカイデスというアルカロイド毒素が多く含まれているのです。この葉を食べて育った幼虫の体内にこの毒素が蓄積され、成長した後も毒素が体内に残っているので、この蝶を食べた鳥は苦い経験をし、次回から食べなくなるという訳です。秋になり日照時間が短くなると体内で分泌されるホルモンに変化が起き、越冬地であるメキシコへと渡りを始めるのです。こうした驚くべき業を成すモナーク蝶達は、この季節アルゴンキンパークの至る所で見受けられます。紅葉に彩られたハイキングコースを歩く中、ゴールデンロッドの花などに留まり北東から吹く風を待つ彼らの姿を見つける事でしょう。

きのこ類もアルゴンキンをハイキングすると良く見られ、この季節のハイライトと言えるでしょう。ベニテングタケ、サンゴハリタケ、マンネンタケなど様々な菌類であるきのこ達が顔を覗かせています。こうした菌類はバクテリアと協力し、倒木などを腐乱させあらゆる養分を吸収し効率よく成長し胞子を飛ばして繁殖します。アルゴンキンでは約1000種の菌類が確認されており、オイスターマシュルーム(しめじ)の様に食用となる種類も含まれていますが、確かでない場合は写真を撮るだけにしておきましょう。後はこうした菌類が物質の分解者となり、公園の環境保持に重要な役割を担っている事を学んで下さい。

秋が深まり朝夕寒くなると、メープルなど様々な紅葉の色が深まっていきます。アルゴンキンと並び、紅葉で有名なキラニー州立公園へのバックパッキングツアーへ出発する季節でもあります。この公園は五大湖の一つヒューロン湖北岸、ジョージア湾に面した太古の山脈、ラクローシュマウンテン沿いにあります。私達はこの春この公園を訪れ、クオーツァイト(珪岩)と呼ばれる白い岩盤の尾根が続く荘厳な景色を堪能して来ました。2005年の紅葉シーズンには、この公園内でバックパッキングツアーを開催する予定ですのでご期待下さい。
Happy Trails!

ホリー ブレフゲン
親の影響で幼い時から自然に親しむ。85年、スキーテレマーク社設立。オンタリオ・アウトドアー・アドベンチャーズ代表取締役。 1児の母でもある。


モナーク蝶の不思議
この季節アルゴンキン公園やキラニー公園をハイキングしていると、良く見かける蝶がモナーク蝶です。オレンジ色に黒いスジの入った派手な色も紅葉の季節に良く似合います。モナークはメキシコ〜オンタリオまで数千キロもの渡りをする事で世界的にも有名ですが、夏に繁殖を終えた彼らが南へ帰って行くのも丁度この季節なのです。今回はカナダ南部を代表する蝶でもあるモナーク蝶の驚くべき生態をご紹介します。

数千キロに及ぶ渡りのルートとパターン
メキシコで越冬している間は数千匹、数万匹の群れで針葉樹の木に留まり活動は殆どありません。しかし3月半ばになると低地へ移動し求愛活動を始めます。交尾を終えたメスは北へ渡り始めオスはその場に留まります。途中ミルクウィードの葉を見つけては卵を産み付けさらに北上し、殆どがメキシコと米国の国境付近でその一生を終えます。早くも5月後半、オンタリオ州でまれに見受ける事もありますが、実は彼らが越冬地のメキシコから3000キロもの長い旅から到着した数少ないグループなのです。彼らは前年の秋にメキシコへ渡っているので大陸縦断を往復した事になります。しかしながらオンタリオ州に数多くのモナークが到着するのは、7月頭まで待たなければなりません。彼らはメキシコと米国の国境付近で育った幼虫で、言わば第二世代です。オンタリオに到着した彼らは盛んに交尾を繰り返し、ミルクウィードの草原に卵を産み付け繁殖を続けます。8月に入り日照時間が短くなると体内のホルモンが変化し、交尾が行われなくなる代わりに体内に脂肪をたっぷり貯え南へ帰る準備が始まります。通常25rの脂肪が、越冬地に着く頃は5倍に膨れます。この時期成虫になった第三世代の蝶達も繁殖活動をする事無く、渡りを始めます。渡りがピークとなるのが8月中〜9月中で、良く晴れ、北西の風が吹き始めると、上昇気流と風に乗り、1000m程まで舞い上がり群れを成して南へ飛び始めます。無風時モナークの速度は時速約2キロ程ですが、風に乗ると約50キロ以上のスピードで飛行可能です。越冬地はロッキー山脈を境に2分されています。ロッキーの西側で繁殖したグループはカリフォルニア南部へ渡り、オンタリオ州を始め東部で繁殖したグループはテキサスを経由しメキシコへ渡り、長い距離で約3000キロもの距離となります。越冬地を知らない第二世代、第三世代の蝶達が的確に目的地に到達出来るのは全く驚きで、このメカニズムは残念ながらまだ解明されていません。

トロント大学の教授がカウントラベルを開発し、渡りのパターンを解明
モナークがカリフォルニアやメキシコまで渡りをする事は分かっていましたが、越冬地で見つかる数が極端に少ないのと、どの様な経路で渡りをするか長い間謎でした。そこでトロント大学のアークハート博士は蝶の羽に付ける小さなラベルを開発し、オンタリオで繁殖した蝶にラベルを付け南部で見つかった蝶の情報収集を続けました。こうした地道な活動により渡りルートが次第に解明され、1976年には初めてモナーク蝶の大コロニーがメキシコのシェラマドレオクシデンタルの山奥で発見され大きなニュースとなりました。大コロニーの越冬地は現在10ヵ所程が知られていますが、どれも高度山岳地帯で針葉樹に囲まれ日中は涼しく、夜も氷点下にはならないので、僅かなエネルギーで越冬できる最適な条件なのです。しかしながら、近年こうしたメキシコの越冬地の森林が伐採されモナークの数に影響を及ぼしています。数年前にはミコアカン州の森で死滅している大量のモナークが発見され大きな警笛となりました。

驚くべき自己防衛メカニズム
モナークの幼虫は主に「ミルクウィード」と呼ばれるガガイモ科の多年草の葉を食べて育ちます。葉をちぎってみると中からミルクの様な白色の液が分泌しますが、この中にCardiac Glycosidesというアルカロイド毒素が含まれている為、他の昆虫は食しません。幼虫はこの毒素に免疫があるばかりでなく、この毒素は成虫になっても体内に残ります。その為、鳥などに捕食されずに済むという驚くべき自己防衛メカニズムになっているのです。オレンジと黒の派手な模様は、外敵が直ぐにモナーク蝶だと識別出来るのに役立っています。
さらに驚くべき事は、全く別の種類であるバイスロイという蝶には毒はありませんが、色・形をこのモナーク蝶に似せる事で外的から身を守る手段を身に付けているの事です。こうしてカモフラージュする事を「擬態」と呼びますが、こうした自然の摂理には常に驚かされます。

モナーク Monarch /Danus plexippus(Danainae) マダラチョウ科マダラチョウ属 和名:オオカバマダラ
モナークとは「帝王」の意味で「帝王蝶」とも呼ばれる。羽幅8-10cm。多くのマダラチョウ科の蝶は渡りをするが北米のこの種は世界でも一番長い距離を渡る事で有名。また、幼虫時に毒のある草を食べ、成虫時までその毒を体内に貯え、野鳥などに捕食されない様身を守っている。日本でも同科のアサギマダラ蝶は北海道から九州まで渡り、ガガイモ科の植物を食べて毒を体内に保っている。

手に止まったメスの蝶


オスは後ろ羽に黒い点が二つある


ミルクウィードの葉を食べる幼虫


キズを付けると白い液が流れ出す

紅葉の季節はキノコの季節
「紅葉の中、公園内のハイキングコースを歩くとあちこちにキノコが生えているのに気付きます。日本で馴染み深い種類と良く似たキノコが多いのに驚かされますが、似て非なる物が多いのがキノコの難しい所です。日本では先ず「食用か毒か?」という疑問からスタートしますが、北米ではキノコの食文化は日本ほど発達していませんので、こうした疑問は後回しになってしまいます。アルゴンキンやキラニー公園は残念ながら州立公園ですので、採取する事は出来ませんが、今回は日本でも馴染みのある幾つかの種類を紹介します。

ドクツルタケDestroying Angel/Amanita virosaテングタケ科 テンググタケ属 猛毒
一見マッシュルームが大きくなった様なこのキノコは、デストロイエンゼル(天使殺し)の英名の通り猛毒なので要注意である。傘、ひだ、くき、つば、つぼ全てが白色なので識別が簡単。アマニチンという毒素が体内に入ると下痢、嘔吐の後、腎、肝機能が犯され死に至る。 広葉樹林、モミやツガ林の地上で単生、散生。


ベニテングダFly Agaric/ Amanita muscaria テングタケ科 テンググタケ属 毒
おとぎ話などに出てくるお馴染みのキノコ。一見猛毒の様な印象を受けるがドクツルタケ程ではない。傘は始め球形で次第に偏平し、白いイボが付着している。フライアガリクの英名は、この毒をハエ殺しとして使っていた為。 樺やアスペン、針葉樹の地上に輪生する。


チチタケのなかま Slimy Milk Mushroom/ Lactarius thyinos ベニタケ科 チチタケ属 食
キズの着いた所からミルクの様な液を分泌する事から英名も「ミルクマッシュルーム」である。種類によりこの液がオレンジがかっていたり、緑色に変色したりする。 アルゴンキン内では約30種程のチチタケが確認されている。傘は丸型で開くと偏平〜ジョウゴ型、広葉樹林、針葉樹林に群生、散生。


スギヒラタケ Angel Wing/ Pleurocybella porrigens キシメジ科 スギヒラタケ属 食
針葉樹、特にコケむしたスギの倒木や切り株に多数重なって発生。傘は最初円形で、成長すると扇形やヘラ形となり、薄く白色。径は3〜6cm。茎はほとんど無く、ヒダは白色で途中枝分かれする物もある。英語の「エンゼルウィング」はこれを天使の翼に見立てた物。


スギタケモドキ Scaly Pholiota/ Pholiota squarrosoides モエギタケ科 スギタケ属 食
英名の「スケーリー」とはササクレの事。傘が褐色の尖った鱗片に覆われている事が由来。スギタケはササクレが尖っていない。傘は初め半球形で、丸型〜偏平となる。茎は傘と同色で、つばは綿くず状。この種類は9種程あり、傘にヌメリのあるヌメリスギタケモドキも多い。メープルや樺の立ち木、切り株に叢生する。


カヤタケ Funnel Clitocybe/ Clitocybe gibba キシメジ科 カヤタケ属
傘は始め中心の窪んだまんじゅう形で、後に広がりジョウゴ形となる。色も白〜赤褐色と様々。ひだは白で茎は傘と同じ。英名の「ファンネル」とはジョウゴの事。落葉で敷きつめられた地上に群生。この種は落葉を腐らせ土に返す働きがある為、新芽の発芽や新緑の成長には不可欠である。


サンゴハリタケ Bear's Head/ Hericium americanum サンゴハリタケ科 サンゴハリタケ属 食
メープルなどの広葉樹の枯幹から、多数の針が珊瑚状に垂れ下がって発生するユニークな形のキノコ。最初は真っ白だが大きくなると褐色になり、サイズは10cm〜30cm位になる場合もある。英名の「ベアーズヘッド」はその形をクマの頭に喩えた物。


マンネンタケ Hemlock Polypore/ Ganoderma tsugae サルノコシカケ科 マンネンタケ属 薬
傘は最初白やオレンジ色の柔らかい饅頭形で、肝臓形に広がり、漆を塗った様なてかりがある。大きさも30cm位になる。良く似た近縁種にメープルなど広葉樹に生えるLacquered Polypore(Ganoderma lucidum)がある。この種は「霊芝(れいし)」として古くから、不老長寿の漢方薬に使われてきた。近年は成分である多糖類が免疫強化、制ガン効果などに有効である事が解明されている。



ドクツルタケ

ベニテングタケ

チチタケ

スギヒラタケ

スギタケモドキ

カヤタケ

サンゴハリタケ

マンネンタケ
Editor: Katsu Sakuma
Special thanks : The Friends of Algonquin Park , Ontario Parks
Photo credit: Masaki Sato, Katsu Sakuma, Algonquin Provincial Park
References: "Mushrooms of Alqonquin Provincial Park" by The Friends of Algonquin Park, "Butterflies of Alqonquin Provincial Park" by The Friends of Algonquin Park,
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