ONTARIO OUTDOOR ADVENTURES

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AUTUMN 2001
Backyard
秋の祝典、紅葉とアルゴンキン公園の歴史
秋、9月中旬から10月上旬にかけて、アルゴンキン公園西部に広がる丘陵地帯は色あざやかな紅葉に染まります。四季に恵まれたアルゴンキン公園が毎年迎えるユニークな大自然の祝典です。自然の抱擁に包まれ、公園の多彩な歴史を身近に学びたいハイカーたちを森の遊歩道が招いています。公園道路60号線沿いに伸びる数々の日帰りハイキングコースは、公園とその保護の歴史に貢献し、アルゴンキンの多様な動植物の恵みを分かち合った人々を記念して作られています。

人間とアルゴンキン公園のつながりは、今から4500年以上前、漁、狩猟、野イチゴ摘みなど食料を探し求めることによって継続してきた先住民文化の時代までさかのぼります。ところが近年になって、人間と公園の関係に経済的な利益がからみ、過去170年間においては公園の環境に影響がおよぶまでになりました。1830年代初期の林業開拓者たちは、オタワバレーから今日の公園東部にあたる一帯に集中し、樹齢数百年のマツ材を次々に切り出しては、造船用に英国へと輸出しました。

原生のマツ林が減少すると、今度は米国からの需要に応えるためノコギリを使用した硬材の切り出しが始まりました。角材時代と呼ばれるこの年代には、多くのカナダ人が富を築き上げることに成功しました。材木王の中でも伝人となったJ.R.ブース氏は、植林地の整備がさらなる利益をもたらすと考え、結果的に森林保護と公園の設置を支持することになりました。1893年、アルゴンキン公園は州立公園に指定され、高原に広がる森林とそこに生息する野生動物ばかりでなく、6つある主要河川の水源として保護されることになりました。

林業という、場合によっては森林保護の妨害となるような産業が、7600平方キロメートルにおよぶきわめて重要な自然保護区の設立につながるとは驚かざるを得ません。1900年代初頭には鉄道が整備され、公園への簡単なアクセスと自然へのインパクトが少ないレクリエーションが可能となりました。またカナダの巨匠、トム・トムソンが描いた、心を奪われるようなアルゴンキンの風景画のおかげで、より多くの人々が自然の美やその特性を賞賛するようになりました。
こうした視点は今日にも引き継がれ、アルゴンキン公園はオンタリオ州政府の行政計画にのっとって管理されています。経済的需要と自然保護の対立を解消し、公園内のいかなる開発事業にもきびしいガイドラインが引かれています。

森に足を踏み入れ、秋の日差しの中で静かに揺らめいている紅葉のように、そして公園の歴史のように、心に活力をよみがえらせ、自然の温かみを感じてください。





ホリー ブレフゲン
親の影響で幼い時から自然に親しむ。85年、スキーテレマーク社設立。
オンタリオ・アウトドアー・アドベンチャーズ代表取締役。
1児の母でもある。

アルゴンキンを制覇したシュガーメープル
シュガーメープル(砂糖楓)は名前の通り、メープルシロップが採れる木でカナダの国旗にもなっており、カナダを象徴する木と言えるでしょう。紅葉の季節、真赤に染まったメープルの森が国道沿いにどこまでも続くのを目の当たりにすると、アルゴンキン公園西部の7割がシュガーメープルで占められている事を実感します。林業が盛んになる1800年代以前までは、ホワイトパインと呼ばれる白松の原生林が広がっていました。人間の手により松が切り尽くされた後何故メープルだけがこんなに広がったのでしょうか? それには幾つかの理由が考えられます。
先ずは西部の地形的要因があります。それはアルゴンキン公園のエリアが周囲よりも高く台地になっていた為、約11000年前に氷河が後退した際、平均50cmの厚さと薄いながらもこの辺りに肥沃な堆積物を残して行った事。そして、東部に比べて降水量も多くメープルの成長に適していた事です。白松は元来水はけの良い比較的乾燥した場所を好むので今なお東部にはこの白松の森が広がっています。
次に、早い開花時期と実を多く付ける事、そして発芽率の高さが挙げられます。他の木よりも早い早春に花を咲かせ、夏前には多量の実を付け地面に落とします。地面が落ち葉で被われる前に実を落とし種の発芽率を高めているのです。この実自体も発芽率が高まるような工夫がされています。形は日本のカエデ同様「ヘ」の字をした1対の実で、「メープルキー」と呼ばれています。大きさは片側3〜4cmと非常に大き目です。地面に落ちる際には逆さに落ちるので「Y」の字の形で竹とんぼの様に風に乗り地面に着陸します。大きく重さもあるので、地面に着陸する際ずっしりと地面に接する確率が高くなります。また実が大きいという事はそれだけ発芽する際のエネルギーも大きいという事です。事実、雪解けが始まる前に、雪の下で発芽しているメープルもある程です。
こうした発芽率の高さだけでなく、さらに発芽後の生育力にも大きな要因があります。メープルの種が発芽し、葉を付け育つ時期になると、周囲はうっそうとしたメープルの森となっており日射がほとんど届きません。他の種類の木では運良く発芽出来てもこの時点で死に絶えてしまいます。ところが、メープルの場合2〜3年まではこうした環境でも成長できる力が供わっているのです。メープルの森を歩くと、10cm位の高さまで育った可愛いメープルの木が、辺り一面を蔽っているのを見かけますがこれもうなずける事でしょう。親の木が何らかの理由で倒れ、日光が差し込んできた際こうした予備軍が成長しメープルの森を維持して行くのです。
この様に、シュガーメープルは何通りもの生き残る力を身に付け、このアルゴンキン西部を制覇していると共にアルゴンキンに生きる様々な動植物と密接につながっているのです。
シュガーメープルの他にアルゴンキンで見られる、レッドメープルとストライプメープルの2種もご紹介します。

レッドメープル(ハナノキ)
名前の通り、秋になると真赤な色でシュガーメープルのオレンジ色に比べ一際目立つのがこのメープルです。葉の形はシュガーメープルに一見似ていますが、葉の切れ目が鋭いVの字なので、鈍いUの字の切れ目をしたシュガーメープルと区別が簡単につきます。また、植生もシュガーメープルや他の木が好まない乾いた土地や岩の多い場所、湿地廻りで育つ事が多いのも区別出来る点です。しかしながら条件の悪い場所を植生とする為あまり大きく育ちません。早春に花を咲かせ、6月の終わりにはシュガーメープルに比べて小さ目の種を付け少しでも遠く広範囲に広がる工夫がなされています。この様にレッドメープルはアルゴンキンを制覇したシュガーメープルから生き残る為の適応力を身につけているのです。また、シュガーメープルとの大きな違いには雄雌の木がはっきり分かれている事と雄雌により紅葉の色も違う事です。雄は真赤な色ですが、雌は黄みがかった赤からオレンジ色をしています。

ストライプメープル(シロスジ楓)
太いものでも直径15cmで高さも10mに満たない比較的小さく細いカエデですが、三つに分かれた広く大きな葉と、緑色のベースに白い縦スジの入った幹はハイキングコースを歩いていると良く目につきます。広葉樹林やヘムロック(栂)の森でちょっとした日光が当たる所を見つけては自生していますので、あまり一ヵ所に多く集まる事はありません。他の大きな木の成長でこうした日光が遮られると、淘汰されてしまいます。この種類の多くは日本、中国が原産ですが、このストライプ・メープルだけは北米原産です。

紅葉のメカニズム
ほとんどの葉は光合成の源である葉緑体を含んでいる為緑色をしていますが、日射が短くなる秋になると光合成が効率的に出来なくなる為、葉緑素が分解されます。その結果として元々葉にあったカロチン色素が表に出てくるのがいわゆる黄葉です。それまで葉に送られていた栄養分や水分が遮断されるので葉は次第に枯れ枝から落ちていくのですが、メープルの葉は、光合成で作られた糖分を使いアントシアニンという物質をさらに生成します。このアントシアニンは葉を寒さから守り、少しでも長く葉が枝に着いていられる様にします。そうする事で葉に蓄えられた糖分を出来るだけ多く根に戻す事が出来るのです。アルゴンキンの秋を彩る真っ赤な色の秘密はこのアントシアニンのお陰なのです。

どこまでも続くメープルの紅葉



メープルキー(ノルウェーメープル)



シュガーメープル



レッドメープル



黄、赤と様々な色の紅葉

冬に備えるアルゴンキンのブラックベアー
アルゴンキンが紅葉で真っ赤に燃える季節、およそ2000頭生息していると言われているブラックベアーは冬眠に供える為一生懸命食べ物を食べあさります。夏の中旬から秋にかけては好物のブルーベリーなどのベリー類が豊富に実るので、冬眠から目覚めた春先程お腹をすかせてはいませんが、飲まず食わずで冬を越さなければならない為体に脂肪を貯える必要があるのです。日本のツキノワグマと同じ属で、メスは体重45kg〜70kg、オスも70kg〜150kgと一般に思われているほど大きくありませんが、ちいさな木の実でお腹一杯になるには相当な量が必要です。ベリー類が終わると今度はビーチと呼ばれるブナの木に登りドングリを食べはじめます。小さめの体とはいえ100キロ前後の体重なので木の上でドングリを取るのは大変な仕事です。そこで彼らは木の上に枝を束ねて自分が座れる程度のプラットフォームを作ります。これを俗に「ベアーネスト・クマの巣」と呼びますが、確かに大きな鳥の巣の様に見え、クマがこうした巣の上でドングリを食べている姿を想像するとチョット滑稽な気がします。また、アルゴンキンの森をハイキングすると熊のツメ跡がくっきり残っているビーチぶなの木を良く見掛け、普段姿を見る事の無い彼らの存在を実感します。脂肪をしっかり溜めたクマ達は大きな岩下の洞穴や、大木の根元に空いた穴、倒木の下など「デン」と呼ぶ穴蔵で雪が解ける春先まで冬眠に入ります。

「冬眠」とは言いましたが、両生類や爬虫類などの変温動物ではありませんので正確には「冬眠」ではありません。穴蔵で越冬している間は食物の摂取も排泄もせず、心拍数、体温も下がり出来るだけエネルギーを消耗しないという点では「冬眠」と変わりありません。食料の極端に少なくなる冬を生き残るために彼らが備え付けた適応能力なのです。冬眠に入る直前は通常より6割程高い脂肪を体内に溜めますが、冬眠が終わる春先には通常の3分2に減少しています。さらに驚く事に、メスの場合冬眠最中の1月末に通常2匹の子供を産み落とします。生まれたての赤ちゃんはシマリス位の大きさで、体重500グラム前後と大変小さ目です。子供を押しつぶす事無く、寝ながら授乳を続け穴から出る5月初旬までには4〜5キロの大きさに育っています。
春先穴から出てきてもまだ木の実どころか、新芽も出ていない事が多いので先ず彼らは朽ち果てた倒木や石を崩し、中に隠れているアリや虫の幼虫などを夢中で食べあさります。小さなアリや虫では先ずお腹は満たされないでしょうからこの時期は食べられる物は何でも口にする時期です。事実熊は雑食なので、生まれたばかりの鹿やムースの子供なども食べる事もしばしばです。晩春〜初夏になると、アスペンと呼ばれるポプラの若葉を好んで食べ始め、体重も増え始めます。

アニマルプルーフを徹底しクマ達を保護
熊ばかりでなく、野生動物は餌を捜すのが毎日の仕事です。人間の残して行った残飯は格好の餌となり、自分で探さなくともキャンプ場やゴミ箱など決まった所に捨ててあるので、一度こうした動物達が残飯を見つけると同じ所に戻って来る事がしばしばです。キャンプ場やゴミ箱に頻繁に出没する熊は人間に対する恐怖心を失い、ひいては人間に危害を加える事となるのです。事実アルゴンキン公園でも20年程前までは1シーズン40頭以上のブラックベアー達がこうした理由から射殺されていました。これは熊達が悪い訳ではありません。むしろゴミを散らかし、キャンプ場での食料の保管をきちんとしなかった私達人間の責任と言えるのです。20年程前から公園内のあちこちに設置されているゴミ箱は特別なロック機構の付いた「アニマルプルーフ」対策が施され、各キャンプ場のゴミ集積所もロック付の屋内になりました。また各キャンパーへの啓蒙活動も行き渡り、現在ではクマ達がキャンプ場に姿を現す事はほとんどありません。テントに食べ物を絶対持ち込まず食料は車のトランクに入れる事、インテリアーと呼ぶカヌーでしか行けない奥地のキャンプ地では、地上3メートル、木の幹より1.5メートル離して食料袋を木に吊り下げる「アニマルプルーフ・ハンギング」をする事、そして食事の後は速やかに洗浄片づけ、匂いを残さない事などを徹底させたお陰で、罪の無い動物達を救う事が出来たのです。私達は彼らの生活圏でキャンプを楽しませてもらっている事を常に頭に入れて行動しなければいけないのです。

倒木を崩してアリを探す母熊
(ビジターセンター内ジオラマを撮影)

熊の爪跡が残るビーチの木


熊の大好物ビーチの実


食料は全て木に吊るす

アルゴンキン公園を中心に活躍するナチュラリスト、ロビン・タップリー氏にアルゴンキンの紅葉の魅力を語ってもらいました。

ロビンさんがナチュラリストになったきっかけは何ですか?。
アルゴンキン公園の西にあるドワイトという小さな村で生まれ育ち、幼少からアルゴンキンの自然に接していた事が大きく影響していると思います。鳥が好きだったので、ブッシュパイロットをしながらコーネル大学の通信教育で鳥類学を学び、時間を見つけては渡り鳥の調査や、鷺、白頭鷲の巣を調査するなどのボランティア活動をしていました。ワイマーシュ・ワイルドライフセンターで自然教育プログラムのコーディネーターとして勤務したのがナチュラリストとしての最初の仕事です。ナチュラリストとして活動している間、生まれ故郷であるアルゴンキンの素晴らしさも多くの人々と分かち合いたいと思うようになり、この地に戻り活動を続けています。

ロビンさんの専門は何ですか?
幼少の頃より鳥には大変興味があったので、大学では鳥類学の専攻をしました。アルゴンキンは北部を代表する松などの針葉樹林と南部を代表するメープルなどの広葉樹林が交わっている場所で、鳥類も北と南の両方の種類が見られる事でも有名です。アルゴンキンで見られる260種類の内138種がこの地で繁殖しているのもアルゴンキンの大きな魅力の内の一つです。
鳥類の他には天文も専門で、去年「エコーバレー天文台」の開設をしたばかりです。この地域は光害も無く新月の夜には真っ暗になり、天体観測には最適です。ここには口径40cmのシュミット式反射天体望遠鏡があり肉眼の1万倍の大きさで天体が観測出来ます。普段肉眼では分からない、球状星団や惑星状星雲などもくっきりと観察出来るでしょう。

アルゴンキンでの紅葉ツアーの魅力は何ですか?
アルゴンキン公園は周囲より200m程高い台地になっている事と、特に西部はメープルの森が広がっている事により鮮やかで、スケールの大きな紅葉が楽しめる事が大きな魅力ではないでしょうか。僕の紅葉ハイキングでは公園西部にあるハイキングコースを歩き、紅葉の中をハイキングしながらメープルの木を始め、森で観察できる動植物の話を致します。運がいいとムースに出会えるチャンスもあるかも知れません。また、コースには展望個所も数箇所あり、眼下に広がる紅葉の眺望は最高です。

ありがとうございました。最後に日本の皆さんに何かメッセージはありますか?
今年の秋、皆様と一緒にアルゴンキン公園の紅葉の中でハイキング出来るのを楽しみにしています。






エコーバレー天文台


ハイキングコース上の展望台


ロビン・タップリー氏プロフィール
ブッシュパイロットからナチュラリストに転向。現在は生まれ故郷、ドワイトの村に戻りアルゴンキン・ムスコカ地方を中心としてエコツアー組織「ネイチャー・トレイル」のシニア・ナチュラリストとして活躍中。
Editor: Akemi Nishimura, Katsu Sakuma
Illustrator: Akemi Nishimura
Special thanks : The Friends of Algonquin Park , Ontario Parks
Robin Tapley of Nature Trails
Photo credit: Hideaki Sato, Robin Tapley
References: Trees of Algonquin Provincial Park by The Friends of Algonquin Park
Mammals of Algonquin Provincial Park by The Friends of Algonquin Park,
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